では早速、本日のテーマはこちら。
エアコンの寒冷地仕様モデルと一般地仕様モデルの違い
この内容でお伝えしたいと思います。
ここ数年で随分と定着してきた寒冷地仕様エアコン。
とはいえ、まだまだ馴染みが薄く「どんなものかピンとこない」という方も多いんじゃないかと思います。
正直、エアコン販売に関わるスタッフでも、あやふやに覚えていたり、ちゃんと内容を把握できていいなかったりという状況です・・。
ということで、このページでは・・
▶︎寒冷地仕様と一般地仕様の暖房性能の違い
▶︎具体的なパーツの違い
この部分にポイントを絞ってお伝えしていきたいと思います。
最初に結論
先に、重要なポイントだけお伝えしておきます。
寒冷地仕様モデルは暖房が強い
この認識で大体OKです。
少し補足すると・・
①寒冷地仕様エアコンは暖房が強いですが、必ずしも普通のエアコン(一般地仕様)よりも暖房が強いわけではありません。
①寒冷地仕様エアコンとは、低温・積雪の多い地域でも故障しにくいように作られたエアコンです。
②具体的には、室外機に凍結防止ヒーターを備えたエアコンが寒冷地仕様と呼ばれています。
④凍結防止ヒーターとは、室外機の除霜の際に発生した排水が再凍結するのを防ぐためのものです。
よくある誤解
凍結防止ヒーターがあれば、室外機に霜がつかない?
→凍結防止ヒーターは霜が付くのを防ぐものではありません。
寒冷地仕様エアコンは霜取り運転がない?
→寒冷地仕様エアコンでも霜取り運転はあります。
寒冷地仕様エアコンはノンストップ暖房ができる?
→寒冷地仕様エアコンだからと言って、ノンストップ暖房とは限りません。ノンストップ暖房採用機種は少ないです。
こんな内容で話を進めていきます。
寒冷地仕様は暖かい?
まずは暖房性能の違いについて、ざっくりと見て行きましょう。
寒冷地仕様エアコン→従来のエアコンよりも暖かいエアコン
というイメージを持つ方は多いと思います。
ただ、少し補足があります。
①一般地仕様のエアコンにも暖房が強いモデルはあります。
②寒冷地仕様だからといって、必ずしも一般地仕様よりも暖房が強いとは限りません。
一般地仕様→暖房性能が低いモデルも高いモデルもある
寒冷地仕様→暖房性能がある程度高い〜高い
というように、寒冷地仕様エアコンはある程度暖房性能に期待できる格好となっています。
一般地>寒冷地になることも
寒冷地仕様モデルだからといって、必ずしも一般地仕様よりも暖房が強いとは限りません。
一般地仕様のハイグレードと寒冷地仕様のミドルグレードを比べた場合、リビング向けのサイズでは概ね
一般地ハイグレード>寒冷地ミドルグレード
このようになります。
価格帯ごとの暖房性能を4段階で評価すると概ねこのようになります。
BAD<GOOD<GREAT<EXCELLENTの順で暖房が強くなるとして・・
一般地 | 寒冷地 | |
ハイグレード | GREAT | EXCELLENT |
ミドルグレード | BAD | GOOD |
お手頃グレード | BAD | ー |
こんなイメージです。
ミドルグレード寒冷地仕様は・・
ミドルグレード一般地よりは暖房性能が高い
けど
ハイグレード一般地ほどの暖房性能はない
このような関係になります。
三菱の14畳モデル(ZWシリーズ)を使って実際の数値を入れるとこうなります。
↓4.0kWの低温暖房能力値
一般地 | 寒冷地 | |
ハイグレード | 8.2 | 9.2 |
ミドルグレード | 5.3 | 7.8 |
お手頃グレード | 5.3 | ー |
一般地のミドル・お手頃が5.3ですから、寒冷地ミドルの7.8の方が2割くらい高くなります。
とはいえ、ハイグレード一般地の8.2には及ばない格好となります。
価格は・・
寒冷地ハイ>一般地ハイ>寒冷地ミドル>一般地ミドルという順になります。
価格が高い順番に暖房性能も高い
ともいえます。
例外もあり
多くのメーカーでは・・
一般地ハイグレードよりも寒冷地ハイグレードの方が暖房が強く設定されています。
ただし、一部例外もあります。
ダイキンの・・
一般地ハイグレードモデルAシリーズ
寒冷地ハイグレードモデルDシリーズ
この2つのシリーズは暖房性能は多くの容量帯で同じとなっています。
詳しくはこちらのページで比較しています。
-
【実はほぼ同じ】ダイキンエアコン R・A・Dシリーズの特徴・電気代・冷暖房性能を比較
続きを見る
一般地仕様と寒冷地仕様の具体的な違い
普段店頭でエアコンの案内をする際に
「寒冷地仕様エアコンってどんなものですか?」
と聞かれた時には
「寒冷地仕様エアコンは冷房だけでなく暖房も強いです」
という風にに答えています。
これ以上説明すると、かえって話がややこしくなるというか、また別の誤解が生まれる心配があるからです。
とはいえ、「寒冷地仕様は暖房も強い」だけではスッキリしない方もいるかと思います。
ということで、次はもっと具体的に構造的な違いをお伝えします。
寒冷地仕様エアコン
→凍結防止ヒーター付き
寒冷地仕様モデルの定義というか、どんな要件を満たしたら寒冷地仕様になるのかを確認しましょう。
寒冷地仕様エアコンがどんなものであるのかは、省エネラベルの説明が簡潔でわかりやすいです。
省エネラベルの一文を抜き出します。
"寒冷地仕様とは、積雪、低温に起因する故障を防止するように設計等されたものです。"
このように記載されています。
暖房の強さがどうということではなく、故障を防止する設計かどうかがキーとなっているわけです。
具体的にいうと・・
室外機に凍結防止ヒーターを備えたエアコンが寒冷地仕様
と呼ばれています。
凍結防止ヒーターとは・・
室外機の霜を溶かした排水が再凍結するのを防ぐためのヒーター
これだけではまだピンとこない方も多いんじゃないでしょうか。
実はこの"凍結防止ヒーター"が色々な誤解の原因となっています。
順を追って説明します。
まずは室外機に付く霜と、霜取り運転の話からしていきます。
霜取り運転とは・・
ご存知の方も多いと思いますが、暖房運転時には室外機に霜が付きます。
↑参考画像 シャープ公式サイトより
エアコンの性質上、外気温が氷点下になっていなくても室外機に霜がつくこともあります。
このままでは上手く暖房が出来ないので、この霜を溶かす必要があります。
霜を溶かすときには、暖房に使っていた熱を室外機の霜取りに使うので、部屋の中には熱が届かなくなります。
これが霜取りの内容です。
この時、部屋の中にはスースーした風が出ることがあります。
霜取りの排水が再凍結
霜を溶かした後の排水は、室外機底面の排水穴から外へ流れます。
暖房を使ったときに、室外機から水が垂れるのはこのためです。
↑暖房時に室外機から水が出るのは正常です。
一般地ではこのような想定ですが、寒冷地ではそうはいきません。
というのも、寒冷地では気温がより一層低いため、室外機の中で排水が再凍結してしまう心配があるからです。
本来室外機の下から流れ出るはずの排水が、気温が低いせいで室外機内部で再度凍結。
すると、氷が育ってファンにぶつかり故障の原因に。
こういった事態を防ぐための装置が凍結防止ヒーターです。
凍結防止ヒーターに、霜の付着を抑える効果や、暖房性能の底上げをする効果はありません。
一般地仕様エアコンよりも寒冷地仕様エアコンの方が暖房能力が高いこともありますが、それは凍結防止ヒーターのおかげというわけではありません。
寒冷地仕様=ノンストップ暖房は間違い
暖房を得意とするエアコンの中には、いくつか"ノンストップ暖房"を採用したモデルもあります。
ノンストップ暖房
霜取り運転中であっても暖房を継続できる機能
暖房の温風が途切れないので"ノンストップ"
一般的なエアコンは霜取り運転中に温風がストップしてしまいます。
それに対して、ノンストップ暖房採用エアコンは霜取り運転中でも温風が出るようになっています。
ノンストップ暖房が採用されたエアコンは寒冷地仕様モデルに多いため、次のような誤解が起こりがちです。
よくある間違い
寒冷地仕様エアコンには凍結防止ヒーターが備わっている
→凍結防止ヒーターがあるから霜がつかない
→だから寒冷地仕様エアコンはノンストップ暖房できるんだ!!
赤文字部分の考え方は間違いです。
間違いではあるんですが、この間違った形で理解してしまっている店員もちょいちょいいます。
寒冷地仕様エアコンだからノンストップ暖房という考え方は間違いです。
ノンストップ暖房かどうかは、寒冷地仕様モデルかどうかは関係なく、そういう構造が備わっているかどうかだけが関係します。
ですから・・
▶︎寒冷地仕様エアコンであっても、ノンストップ暖房ではない機種は多いです。
逆に・・
▶︎一般地使用エアコンにもノンストップ暖房が採用されている機種もあります。
というように、ノンストップ暖房かどうかと寒冷地仕様であるかは関係がありません。
ポイント
ノンストップ暖房を希望する場合
❌寒冷地仕様エアコンを買えば良い
⭕️ノンストップ暖房機能を備えたエアコンを選ぶ必要あり
ノンストップエアコン採用モデル
それでは最後に簡単にノンストップ暖房を備えたエアコンを紹介していきたいと思います。
現在販売されている中でノンストップ暖房を掲げているのは・・
ノンストップ暖房エアコン
赤文字→寒冷地仕様
青文字→一般地仕様
三菱
ズバ暖霧ヶ峰FDシリーズ
ズバ暖霧ヶ峰ZDシリーズ
パナソニック
フル暖エオリアUXシリーズ
エオリアLXシリーズ
エオリアXシリーズ
▶︎ノンストップとは書いていないけど、構造的には近いもの◀︎
富士通
ゴク暖ノクリアZNシリーズ
ノクリアXシリーズ
ノクリアZシリーズ
この辺りが主要なモデルとなります。
ご覧いただくとわかるように、一般地仕様にもノンストップ暖房が採用されているモデルもあります。
エアコンをメイン暖房として使う際にも心強いノンストップ暖房ですが、ノンストップ暖房には注意が必要な点もあります。
ノンストップとはいっても・・
以前は日立やシャープあたりなんかもノンストップ暖房を採用していたんですが、今は無くなっています。
やはりノンストップというのは難易度が高いのでしょうね。
ある程度の気温ならノンストップで動いても、極低温の状況では止まってしまうこともあるようです。
ですから、ノンストップ暖房とはいっても「絶対に止まらない」わけではないです。
同じノンストップ暖房でも・・
ノンストップ暖房とは言っても、室外機に霜は付きますし、霜取り運転もあります。
常に同じ強さだ暖房できるわけではなく、霜取り中は温風が弱くなります。
ここにメーカーごとに差が出ます。
現在ノンストップ暖房を謳っているのは三菱とパナソニックの2社なんですが、それぞれ方式は異なります。
詳しい説明は省略しますが・・
三菱→デュアルオンデフロスト
霜取り中でも室外機の半分は暖房モード
霜取り時でも、吹き出し口に手をかざせば暖かい
パナソニック→エネチャージ
霜取り時に蓄熱ユニットに蓄えた熱を利用
霜取り時に出てくる温風は、室温より少し高い程度(ぬるい)
ということで、ノンストップ暖房を希望する場合は三菱のズバ暖がおすすめです。
三菱のズバ暖ZD
寒冷地仕様エアコンといえば三菱がトップ人気でしょうか。
ノンストップ暖房採用シリーズとしてはFDシリーズ、ZDシリーズの2つがあります。
売れ筋はZDシリーズですね。
↓冷房時主に14畳(4.0kW)
グレードとしては上から2番目なんですが、これが主力です。
ノンストップ暖房をはじめ・・
▶︎清潔トリプルボディで清潔性が高い(汚れがつきにくい・自動カビ予防・外せるパーツが多い)
▶︎ムーブアイで自動で省エネ
ということで、省エネ・暖かさ・清潔性の三拍子が揃っています。
寒冷地エアコンとしてはこれが一押しです。
この上にもう一つFDシリーズというものがあります。
↓FDシリーズ 冷房時主に14畳(4.0kW)
省エネ性能や暖房性能はこちらの方が上になります。
ただし・・
▶︎室内機のサイズが大きいので設置ができないこともある
▶︎価格が最高級クラス
ということで、数が売れるようなものではないです。
プレミアム的な位置付けという雰囲気ですね。
パナソニックのフル暖UX
三菱以外では、パナソニックがノンストップ暖房を採用しています。
主なモデルとしては寒冷地仕様の上位モデルに当たるUXシリーズですね。
↓冷房時主に14畳(4.0kW)
先ほどお伝えしたように、ノンストップ暖房の効果はそれなり程度というところです。
とはいえトータルで見れば・・
▶︎ナノイーXでカビ対策
▶︎ホコリレスコーティングでホコリ・油汚れに強い
というようにバランスの良いスペックですので、価格次第では候補になることもあるでしょう。
その際はフィルター掃除の自動排出にご注意ください。
富士通ゴク暖ZN
富士通はノンストップ暖房ではませんが、三菱に近い除霜方法になっており、温風が止まりにくくなっています。
↓冷房時主に14畳(4.0kW)
▶︎熱交換器加熱除菌
▶︎パワフルな暖房
▶︎それでいて価格は他メーカーより安め傾向
ということで、予算を抑えつつパワフルな暖房を取り入れることができます。
富士通というと馴染みがくて不安に感じる方もいるかもしれませんが、スペックも高くおすすめできます。
三菱 or 富士通 どっち?
三菱はどちらかというと、効率よく吹き分けて無駄を抑えることを得意としています。
少人数で使う・いつも決まった場所にいる
などの時におすすめです。
それに対して・・
富士通は部屋全体を快適にすることを得意とします。
家族みんなが揃うことが多い・部屋のどこにいても快適を求める
こんな時におすすめとなります。
以上、普通のエアコンと寒冷地仕様エアコンの違いについてと、ノンストップ暖房エアコンの紹介でした。
最後まで読んでいただきありがとうございます。