
この記事を書いた人: 「白物家電ブログ)」管理人
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冬が近づくと、家電売り場にはたくさんの電気暖房器具が並びますよね。
速く暖まるもの、じんわりと暖かいもの、風が出るもの…。
「どれも電気で暖まるなら、何が違うんだろう?」 「赤外線ヒーター、オイルヒーター、セラミックファンヒーター…結局、自分に合うのはどれ?」
こんな風に、売り場で悩んだ経験、ありませんか?
それぞれの暖かさの体感の違いは、実は内部の「発熱のしくみ」に主な理由があります。
この記事では、各電気暖房器具の「暖房方式」、「発熱体の種類と仕組み」、そしてそれらがもたらす「暖かさの体感」に焦点を当て、それぞれの製品が持つ本当の強みと弱みを比較していきます。
使い方に合わせた最適な一台を見つけるためのヒントになればと思います。
目次
1. 主要な電気暖房器具 比較早見表
まずは、主要な電気暖房器具のポイントをギュッとまとめた比較表から見ていきましょう。
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2. 暖房方式の基本:「輻射」と「対流」について
各ヒーターの違いを理解するために、まずは暖房の2つの基本方式、
「輻射(ふくしゃ)」と「対流(たいりゅう)」について簡単に説明します。
2-1. 輻射熱(赤外線)で暖める
主にカーボン・グラファイトヒーター/オイル・オイルレスヒーター
これは、太陽の光や焚き火の熱のように、熱が電磁波(主に赤外線)として空間を飛んできて、当たったモノを直接暖める方式です。
空気を介さないため、風がなくても暖かさを感じます。
この赤外線には、さらに波長の長さによって2種類あります。
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近赤外線:
波長が短く、皮膚の表面で熱に変わります。速暖性が高く、スイッチを入れるとすぐに「熱い!」と感じやすいのが特徴です。 -
遠赤外線:
波長が長く、体の奥深くまで浸透して内側から体を温めます。「体の芯からじんわり」という、質の高い暖かさをもたらします。
2-2. 対流熱で暖める
主にセラミックファンヒーター
こちらは、ヒーターで暖めた空気をファンなどで循環させて、空間全体の温度を上げる方式です。
ヘアドライヤーをイメージすると分かりやすいかもしれません。
風によって暖かさを感じるのが特徴です。
3. 各タイプ徹底比較!暖かさのメカニズムと体感の違い
では、この基本を踏まえて、それぞれのヒーターがどんな仕組みで、どんな暖かさを提供してくれるのか、詳しく見ていきましょう。
3-1. 【赤外線ヒーター】直射の暖かさ:カーボン / グラファイト / シーズ
これらのヒーターは、輻射熱をメインに利用するタイプです。
▼カーボンヒーターの例
強弱2段階+左右自動首振りあり
シンプルでお手頃価格
▼グラファイトヒーターの例
超即暖0.2秒
強さ4段階調節
今年から自動首振りも可
▼シーズヒーターの例
強さ11段階調節
6段階パワーモニター(強さランプ)
ヒーター部はタテ・ヨコ変更可
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カーボンヒーター / グラファイトヒーター
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仕組み:
発熱体に炭素系の素材(炭素繊維やグラファイトシート)を使い、電気を流して高温にすることで、主に近赤外線を放出します。 -
体感:
皮膚の表面で熱に変わる近赤外線の効果で、スイッチを入れると数秒~0.2秒という速さで暖かさを感じられます。 -
補足:
グラファイトの「0.2秒」という速さは、脱衣所など瞬間的な暖かさが欲しい場面で大きなメリットになります。ただ、カーボンの「数秒」も実用上は十分に速いと言えます。
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シーズヒーター
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仕組み:
発熱体は内部のニクロム線ですが、その熱を金属の保護管(シース管)に伝えます。そして、熱くなった金属管自体が、効率よく遠赤外線を放出する、という二段階の仕組みになっています。 -
体感:
波長の長い遠赤外線が体の奥まで届くため、「体の芯からじんわり」という、質の高い暖かさが得られます。暖まるまで数分かかりますが、その後の快適さは格別です。 -
補足:
発熱体が金属管で保護されているため、発熱体自体の物理的な耐久性が高いのも特徴です(ただし、製品全体の寿命が長いことを保証するものではありません)。
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3-2. 【オイルヒーター / オイルレスヒーター】穏やかな輻射と自然対流
これらは、輻射熱をメインとしつつ、穏やかな自然対流でも部屋を暖めるハイブリッドタイプです。
▼オイルヒーターの例
お手頃価格のデロンギオイルヒーター
強さ3段階調節
▼オイルレスヒーターの例
デロンギのマルチダイナミックヒーター
ハイパワー1500Wタイプ
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オイルヒーター
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仕組み:
内部のオイルを電気で温め、その熱で本体のフィン(放熱板)全体が暖まります。そのフィンから遠赤外線が放射されるのと同時に、本体周りの空気が暖められて上昇する「自然対流」も発生します。 -
体感:
風を全く出さずに、部屋の壁・床・天井ごと、じんわりと暖めていくため、「陽だまりのような暖かさ」と表現されます。暖まるまで時間がかかるのが最大のネックです。
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オイルレスヒーター
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仕組み:
オイルの代わりに、アルミやセラミックスなどの特殊な発熱体を直接温めます。暖房の原理はオイルヒーターとほぼ同じです。 -
体感:
オイルヒーターに似た穏やかな暖かさを提供しつつ、オイルを温める時間がないため、立ち上がりが速いのが特徴です。
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3-3. 【セラミックファンヒーター】速攻で空気を暖める
こちらは、これまでとは全く違う、対流(温風)をメインに利用するタイプです。
▼セラミックファンヒーターの例
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仕組み:
発熱体に「PTCセラミックス」という特殊な半導体セラミックスを使用しています。
このセラミックは、温度が上がりすぎると自動的に電気の流れを抑える「自己温度制御機能」を持っており、非常に安全性が高いのが特徴です。
この熱くなったセラミックにファンで風を当て、温風として吹き出します。 -
体感:
スイッチを入れるとすぐに温風が出るため、足元や脱衣所といった狭い範囲を急速に暖めるのが得意です。
ただし、ファンが回る音はしますし、温風が直接当たることで肌の乾燥を感じやすい面もあります。 -
補足:
吹き出し口から見えるハニカム状のものが、このPTCセラミックスです。
昔の電気ファンヒーターに見られた、赤熱するコイル状のニクロム線とは、安全性や仕組みが根本的に異なります。
4. 結局どれがいい?利用シーン別 最適な選び方
ここまで解説したことを踏まえて、みなさんの使い方に合ったヒーターはどれか、考えてみましょう。
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とにかく「すぐに暖まりたい」なら
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グラファイトヒーターやセラミックファンヒーターが選択肢になります。脱衣所や朝の着替えなど、短時間勝負の場面で活躍します。
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「部屋全体を、風なしでじっくり暖めたい」なら
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オイルヒーター、オイルレスヒーターが候補です。リビングや寝室で、長時間快適に過ごしたい場合に適しています。
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「スポットで、体の芯から暖まりたい」なら
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シーズヒーターがおすすめです。リビングでソファのそばに置くなど、パーソナルな空間で質の高い暖かさを求める場合に最適です。
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「コストを抑えて手軽に暖まりたい」なら
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カーボンヒーターが第一候補でしょう。デスクワークの足元など、補助的な使い方でコスパを発揮します。
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まとめ
各電気暖房器具は、それぞれ異なる発熱原理と暖房方式を持っています。
単に「電気で暖める」という共通点だけでなく、「どのように熱を作り、どのように熱を届けるか」という違いが、暖かさの質や体感、そして最適な利用シーンを決定づけます。
この記事が、あなたの冬の生活をより快適にするための、暖房器具選びの参考になれば嬉しく思います。