加湿機

【加湿器の電気代を深掘り】スチーム式加湿器の電気代は本当に高い?暖房費まで含めた「トータル光熱費」で考えてみよう

 

この記事を書いた人: 「白物家電ブログ)」管理人

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メインの加湿器記事では、「スチーム式は電気代が高い、気化式は安い」というお話をしました。

これは加湿器単体で見れば、紛れもない事実です。

しかし、冬の家電選びはもう少し広い視点で見ると、また違った側面が見えてきます。

例えば、「気化式の加湿器を使っていると、なんだか部屋が肌寒く感じる…」と感じた経験はありませんか?

実は、加湿器の電気代だけを見て「高い・安い」を判断するのは、少し早計かもしれません。

今回は補足として、冬の光熱費を「加湿器+暖房」のトータルコストという視点で捉え直し、どの加湿方式がご家庭にとって本当に経済的なのかを、少し深掘りして解説していきます。

 

なぜ加湿方式によって消費電力がこんなに違うのか?

まず、根本的な仕組みの違いを理解することが重要です。

ポイントは、「液体である水を、気体である水蒸気に変える」ためには、必ずエネルギーが必要になるという物理の原則です。

このエネルギーをどこから調達するのか、その方法が加湿方式によって異なります。

スチーム式

エネルギーを「全部自分で」作り出す スチーム式は、本体に内蔵されたヒーターで電気を熱に変え、その熱で水を沸騰させて蒸気にします。
つまり、加湿に必要なエネルギーをすべて自前の電力で賄っているわけです 。
例えば、1時間に500mlの水を蒸発させるには、理論上約360Wの熱エネルギーが必要です。
象印の加湿器の消費電力が410W程度なのは、このエネルギーを自前で作り出しているからに他なりません。  

気化式

エネルギーを「部屋の空気から借りる」 一方、気化式は、水を含んだフィルターにファンで風を送るだけなので、本体の消費電力は数十Wとごくわずかです。
では、水を蒸気に変えるためのエネルギーはどこから来ているのか?
それは、部屋の空気から熱(気化熱)を奪っているのです 。
濡れたタオルに風を当てると、タオルが冷たくなるのと同じ原理です。
その結果、気化式加湿器から出る風はひんやりと感じ、部屋の温度をわずかに下げる要因になります。
そして、その下がった分の室温を維持するために、今度はメインの暖房器具がいつもより少しだけ多く頑張る必要が出てくるのです。  

結論が変わるかも?ご家庭の「メイン暖房」は何ですか?

ここからが本題です。気化式が部屋から奪った熱を、どんな暖房器具で補うか。その暖房器具の「燃費(効率)」によって、家全体のトータル光熱費は大きく変わってきます。

【ケース1】メイン暖房が「エアコン」の場合

エアコンの強み

ヒートポンプ技術による高いエネルギー効率 エアコン(ヒートポンプ式)は、少ない電力で空気中から熱を集めて移動させる、非常に高効率な暖房器具です。

この効率はCOP(成績係数)という数値で表され、「使った電気の何倍の熱を生み出せるか」を示します。近年のエアコンはCOPが3〜7と非常に高く、「1」の電気で「3〜7」の熱を生み出すことができます 。  (定格条件時)

トータルコストを考えると…

気化式の場合:(加湿器本体の電気代:ごくわずか)+(エアコンが室温低下分を補うための追加電気代:高効率なので少しで済む

スチーム式の場合: (加湿器本体の電気代:大きい)

結論: 高効率なエアコンで暖房しているご家庭では、気化式が奪った熱を少ない追加電力で補えるため、気化式加湿器を使った方がトータルコストは安くなる可能性が高いと言えます。

手短に言えば、エアコンは電気代の効率が良いので、室温維持と加湿をしっかり分業したほうがトータルコストが少なく済むという感じです。

【ケース2】メイン暖房が「電気ヒーター」や「オイルヒーター」の場合

電気ヒーターの特徴

シンプルな構造だが、効率は電力なり 電気ヒーターやオイルヒーターといった抵抗加熱式の暖房は、電気をそのまま熱に変えるシンプルな仕組みです。

そのため、COPは「1」。使った電気と同じ量の熱しか生み出すことができません 。  

トータルコストを考えると…

気化式の場合: (加湿器本体の電気代:ごくわずか)+(電気ヒーターが室温低下分を補うための追加電気代:効率が良くないので結構かかる

スチーム式の場合: (加湿器本体の電気代:大きい)

結論: この場合、気化式が奪った熱を、効率の良くない電気ヒーターで補うことになるため、追加の電気代が思ったよりかかります。
結果として、スチーム式加湿器が消費する電力と、トータルコストに大きな差は出にくくなります
見方を変えれば、スチーム式加湿器が消費する電力の一部は、そのまま部屋を暖める「補助暖房」としても機能している、と考えることもできるわけです。

言い方は悪いですが、電気暖房もスチーム式式加湿も室温維持の面では電気効率が低いので、どちらを使って室温維持を試みても、コストに差が出にくいというわけです。

【番外編】石油・ガスファンヒーターを使っている場合は?

エアコンや電気ヒーターとは別に、石油やガスのファンヒーターをメインで使っているご家庭も多いでしょう。これらの暖房器具には、一つ大きな特徴があります。

それは、燃料を燃やすときに水蒸気を発生させるという点です 。つまり、暖房器具自体が加湿もしてくれているのです。  

そのため、エアコン暖房の部屋に比べて、そもそも加湿器に求められる加湿能力が低くて済む可能性があります。この環境でどの加湿器が最も経済的かは、電気代と灯油・ガス代の単価比較になるため一概には言えませんが、こうした特性があることは知っておくと良いでしょう。

まとめ:あなたの家にとっての「最適」は?

「スチーム式は電気代が高い」という常識は、加湿器単体で見れば間違いではありません。

しかし、それは加湿に必要なエネルギーを、正直にすべて単体で賄っているからこその消費電力です。

家全体の光熱費という広い視点で見ると、その評価はご家庭のメイン暖房が何かによって変わってきます。

  • 高効率なエアコン暖房がメインで、とにかくランニングコストを抑えたい気化式やハイブリッド式が有利です。(ただし、その分お手入れの手間は増えます)
  • 電気ヒーターがメイン暖房、または局所的な暖房しか使わないスチーム式と気化式のトータルコスト差は縮まります。この場合、お手入れの楽さや衛生面を重視してスチーム式を選ぶのは、非常に合理的な選択と言えるでしょう。

このように、少し視点を変えるだけで、家電選びの基準は変わってきます。

今回の話も参考にしつつ、メイン記事で解説した「お手入れの手間」「衛生面」「必要な加湿能力」などを総合的に判断して、ご自身のライフスタイルにぴったりの一台を見つけていただければと思います。

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