暖房器具

【期待外れ?】温風サーキュレーターの暖房能力は?購入前に知りたい本当の実力と効果的な使い方

 

この記事を書いた人: 「白物家電ブログ)」管理人

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「温風が出るサーキュレーターってありますか?」

と尋ねられることがあります。

明言はしないものの、どうやらパワフルな暖房器具として期待しているようなんですよね。

確かに、温風が出るサーキュレーターという製品は存在します。

でも、それは皆さんが期待しているような「部屋全体をポカポカにする暖房器具」とは、少し役割が違うかもしれません。

この記事では、そんな温風サーキュレーターの「本当の実力」と、その使い方についてお伝えして行きます。

なぜ「サーキュレーターで部屋が暖まる」と思ってしまうのか?

温風サーキュレーターにメイン暖房としての過度な期待が集まってしまう背景には、大きく分けて2つの「信じさせる要素」があるんじゃないかと思います。

① テレビ通販などで見かける「8畳対応」という言葉の魔力

大手通販のジャパネットたかたなどで温風サーキュレーターが紹介される際、

「暖房の適用畳数(目安) 約8畳」といった表記が使われることがあります。

これを見ると、8畳のリビングでもしっかり暖めてくれそうに感じますよね。

しかし、この数字には少し注意が必要です。

仕様をよく見ると、「※コンクリート住宅・断熱材ありの場合」といった小さな注釈が添えられています。

これは、一般社団法人日本電機工業会(JEMA)が定めた基準の中で、ある程度熱が逃げにくい(=暖房が効きやすい)条件での数値なのです。

1200W暖房の暖房目安

暖房の目安(温暖地の場合)
断熱材木造住宅コンクリート住宅
なし約3畳約4畳まで
50mm約6畳まで約8畳まで

日本の一般的な戸建てに多い「断熱材のない木造住宅」の基準で計算し直すと、同じヒーターでも暖房能力の目安は約3畳~5畳まで下がります。

つまり、「8畳」という言葉は嘘ではないものの、ある程度条件の良いシチュエーションでの数字なわけです。

ちなみに、エアコンや石油ファンヒーターと近い条件での表記なら"3畳まで対応"というところです。

もちろん、比較的新しい住宅なら断熱性能が高いので、8畳と思っても大丈夫なこともありますし、もっと広い部屋でも暖まる場合もあります。

ですが、日本の全住宅の断熱性能の分布を考慮すると、半分以上の住宅では8畳の暖房は快適さに欠ける結果になることが予想されます。

② SNSなどで見かける、行き過ぎた「嘘広告」の影響

さらに悪質な問題として、SNS上で横行する詐欺的な広告の存在が挙げられます。

これらの広告は、消費生活センターなどへの相談が急増している社会問題となっています 。

その手口は共通しており、以下のような特徴が見られます。

  • 非現実的な性能の主張: 「1秒で室温が20度下がる」「3秒で体感温度を16度下げる」といった、物理法則を無視した性能を謳います。
  • 有名ブランドの不正利用: アイリスオーヤマやパナソニックといった信頼ある企業名やロゴを無断で使用し、あたかも共同開発品であるかのように見せかけます。
  • 加工された映像: 吹き出し口から白い煙(実際には合成映像)を出すことで、強力な冷風や温風が出ているかのように演出します。
  • 粗悪品の送付: 実際に届く商品は、広告とは似ても似つかない安っぽいプラスチック製のおもちゃのような製品であり、性能も全く伴っていません。

こうした広告が作り出す過剰なイメージが、「サーキュレーターはパワフルな暖房器具だ」という誤解の一因になっている可能性があります。

↓実際に買って使ってみたYouTube動画を作成しています。

温風サーキュレーターの「暖房」の正体

では、温風サーキュレーターの暖房機能の本当の実力はどれくらいなのでしょうか。

結論:1200Wの「セラミックファンヒーター」です

温風サーキュレーターの温風機能は、電気でセラミックを発熱させ、ファンで風を送る「セラミックファンヒーター」と全く同じ仕組みです。

そして、そのヒーターの最大出力は、多くのモデルで1200Wに設定されています。

つまり、温風サーキュレーターの暖房能力は、一般的な1200Wのセラミックファンヒーターと同等です。

サーキュレーターだからといって、暖房効果が特別にパワーアップしているわけではありません。

1200Wは、1200W分の熱しか生み出せないです。

「強い風」と「暖かさ」の関係

「でも、風が強いから暖かさが遠くまで届くのでは?」と思うかもしれません。

それは半分正解で、半分誤解です。

確かに、強力な風はヒーターが生み出した熱を遠くまで「運ぶ」ことができます。

しかし、その過程で周りの冷たい空気と混ざり合うため、風が届けば届くほど、その風自体が持つ暖かさは薄まっていきます。

ヘアドライヤーも、吹き出し口付近ではあんなに熱いですが、少し距離を開けるだけで急激にぬるい風になりまよね。

それと似た話です。

温風サーキュレーターは「暖かさを届ける」のは得意ですが、それはあくまで1200Wという限られた熱量を、風に乗せて拡散させているに過ぎないのです。

また、温風時は大風量に設定できないモデルも多くあります。

温風機能付きサーキュレーターに暖かい風を大風量で出せるほどのパワーはありません。

これはどれだけ家電が進化しても変わり様なない物理的な限界です。

気になる電気代は?送風時と温風時で大違い

温風サーキュレーターは、使い方によって電気代が大きく変わる点も知っておく必要があります。

  • 送風モード(サーキュレーターとして使用):消費電力は20W~45W程度。1時間あたりの電気代は約1円前後と非常に省エネです。
  • 温風モード(ヒーターとして使用):消費電力は1200Wに跳ね上がり、1時間あたりの電気代は約37円にもなります。

もしメインの暖房として長時間使うと、電気代が高額になってしまう可能性があります。

このことからも、温風機能は長時間の使用には向いていないことが分かります。

「ダメな暖房」じゃない!温風サーキュレーターの賢い使い方

ここまで読むと、「温風サーキュレーターって、あまり良くないのかな?」と感じてしまうかもしれません。しかし、それは大きな誤解です。

温風サーキュレーターは「メインの暖房器具」として期待すると力不足ですが、「空気を循環させる専門家」「スポット暖房の専門職」 として見方を変えると、便利な家電にもなり得ます。

手短に言えば、局所的に、短時間で使うなら、便利に使えるシーンもあります。

① エアコンの最高の相棒として(空気循環)

冬の暖房時、エアコンから出た暖かい空気は、どうしても部屋の上に溜まりがちです。

その結果、「顔はのぼせるのに、足元はスースーする」という不快な温度ムラが生まれます。

ここでサーキュレーターの出番です。

天井付近に溜まった暖かい空気を力強い風でかき混ぜ、部屋全体の空気を循環させることで、温度ムラを解消します。

  • 効果的な使い方: エアコンの対角線上の床に置き、天井やエアコン本体に向けて風を送るのがおすすめです。
  • 本当の省エネ効果: 部屋の温度が均一になると、体感温度が上がります。そのため、エアコンの設定温度を1〜2℃下げても快適に過ごせるようになり、結果的に電気代の節約に繋がります 。

普段はあくまで普通のサーキュレーターとして使います。

② 狭い場所のスポット暖房として

限定的とされた「温風機能」が真価を発揮するのが、この使い方です。

  • おすすめの場所:
    • 脱衣所・洗面所: お風呂に入る前に数分間だけ運転すれば、ヒートショック対策になります。
    • デスクの下: 在宅ワークで冷えがちな足元をピンポイントで暖めます 2
    • キッチン: 朝の寒いキッチンでの作業中に、足元を暖めるのに便利です 1

必要な時だけ、必要な場所を素早く暖める。これこそが温風機能の本来の使い方です。

③ 一年中、様々なシーンで活躍

温風サーキュレーターの価値は、冬だけではありません。

  • 夏: 冷房の冷たい空気を循環させて、涼しさアップ。
  • 梅雨: 部屋干しの洗濯物に風を当てて、乾燥時間を短縮 。
  • 換気: 窓を開けて外に向ければ、効率よく部屋の空気を入れ替えられます 39

このように、温風サーキュレーターは「限定的なヒーター機能が付いた、高性能な空気循環器」と正しく理解することで、一年中役立つ便利な家電になります。

購入前にチェック!代表的なモデルを比較

「メイン暖房ではない」ということを前提に、ここでは代表的なモデルをいくつかご紹介します。

選ぶ際は、ヒーターの畳数表示よりも、サーキュレーターとしての基本性能(空気循環能力、モーターの種類、首振り機能など)に注目するのがポイントです。

1. バランス型:スリーアップ「ヒート&クール」シリーズ

消費電力
送風モード時:38W
温風モード時:1000W

風量設定
3段階(強・中・弱)
※温風モード使用時は1段階

適用畳数16畳などと表記されていることがありますが、これはあくまで送風での空気循環のことです。

温風運転時用の温度設定や強弱切替はないので、補助暖房目的というよりは、衣類乾燥向きの商品という雰囲気ですね。(温風時は風量調節できません)

2. テレビ通販の定番:山善「ホット&クールファン」

消費電力:送風時/22W、温風時/1100W、乾燥時/1200W

テレビショッピングなどでよく紹介されているタイプです。1100W~1200Wのヒーター、省エネなDCモーター、上下左右の自動首振りなど、基本機能はしっかりしています。

ただしこちらも温風時は風量調節はできません

まとめ

温風機能付きサーキュレーターは、広告のイメージから「万能な暖房器具」と期待されがちですが、その本当の姿は少し異なります。

  • 暖房能力は限定的: メインの暖房にはならず、あくまで脱衣所や足元などを暖めるスポット暖房が得意。
  • 電気代に注意: 温風モードの長時間の使用は電気代が高くなるため、短時間の使用が基本。
  • 真価は空気循環にあり: 本来の最も得意な仕事は、エアコンと協力して部屋の温度ムラをなくし、快適性と省エネ性を高めることです。

こうした特徴を正しく理解すれば、温風サーキュレーターは一年中あなたの生活をサポートしてくれる、とても便利な家電になります。広告のイメージに惑わされず、その本当の実力を見極めて、ご自身の使い方に合った一台を選んでみてください。

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