はじめに
日本の住宅の断熱性能について、各種基準や年代による変遷、現在の統計データを自分用に整理しまとめました。
ブログ記事として書いたものではありませんが、参考になるものもあると思うので、そのまま公開します。
各数値や分類には、推定値も含まれます。その点ご注意ください。
目次
1. 断熱性能の物差し:「断熱等性能等級」とは
現在の住宅性能を示す最も基本的な指標。等級1~7まであり、数字が大きいほど高性能。
この等級は、**UA値(外皮平均熱貫流率)**という、家からどれだけ熱が逃げやすいかを示す数値で定義される(UA値は小さいほど良い)。
【リンク集】1. 「断熱等性能等級」とは
4地域=東京、大阪など
6地域=宮城など
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【補足】
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UA値は、数値が小さいほど断熱性能が高いことを示します。
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等級2と3には公式なUA値の基準がないため、()内は当時の仕様から計算した参考値です。
suumo
断熱等級とは?4・5・6・7の違いや調べ方、メリット・デメリットを解説
国土交通省
住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)に基づく住宅性能表示制度について
断熱等性能等級を定めている法律「品確法」の、国土交通省による公式解説ページです。制度全体の概要を知ることができます。
2. 年代別の基準変遷:いつ建てられた家が、どのレベルか?
建築年代によって、当時標準とされていた省エネ基準は異なる。
注意:あくまで当時の最高基準であり、全ての住宅がこれを満たしているわけではない。
3. 日本の住宅ストックの現状【統計データ】
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総住宅数: 約6,500万戸(令和5年 総務省)
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既存住宅の断熱性能:
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約8割の住宅が、現在の省エネ基準である等級4にすら満たない。(国交省資料)
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等級5以上の住宅は、ストック全体で見れば数パーセント程度と推計される。
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新築戸建ての断熱性能:
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**約25%**が等級5(ZEH基準)以上で建築されている。
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ただし、これは大手ハウスメーカー(ZEH率8~9割)と、中小工務店(ZEH率1~2割)の平均値。
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大手ハウスメーカーの市場シェアは全体の**約25%〜30%**程度。
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【リンク集】3. 日本の住宅ストックの現状(追加案)
国土交通省 / (一社)住宅リフォーム推進協議会
国交省が業界団体向けに発表した、最新(2024年時点)のプレゼンテーション資料。日本の既存住宅ストックのうち、現行の省エネ基準(等級4)を満たしていない住宅が約8割を占める、という円グラフが掲載されています。
国土交通省
こちらは2019年時点の、国土交通省による公式な状況報告資料です。上記の最新データと比較することで、この数年間で省エネ住宅の割合がどのように変化したかを読み取ることができます。
4. 具体例で見る断熱性能の目安
暖房器具のカタログスペックを読み解く上でのベンチマーク。
【リンク集】4. 具体例で見る断-熱性能の目安
エアコンの「東京モデル」
JRAIA((一社)日本冷凍空調工業会)
エアコンの省エネ性能(期間消費電力量)を算出する際の前提条件として、「外気温度:東京をモデルとしています」「住宅:JIS C 9612による平均的な木造住宅(南向)」と明記されています。この「平均的な木造住宅」が、いわゆる「東京モデル」を指します。
オイルヒーターの「JEMA基準」
DBK(日本ゼネラル・アプラィアンス株式会社)
ドイツの暖房器具メーカーDBKの製品ページです。暖房の目安について「(社)日本電機工業会の統一基準になります」と明記し、その基準が「断熱材なし」「断熱材50mm」の木造・コンクリート住宅でそれぞれどうなるか、具体的な畳数を表で示しています。JEMA基準の詳細が分かりやすくまとまっています。
オイルヒーターの「メーカー独自主張」
CORONA(株式会社コロナ)
コロナのオイルレスヒーター「ノイルヒート」の製品ページです。「※2 自社基準に基づいた畳数の目安」として、「次世代省エネルギー基準(Ⅲ~Ⅴ地域相当)外気温度5℃時、室温が20℃以上を維持することを確認」と、メーカー独自の測定基準を具体的に明記しています。
5. 地域差:8つの地域区分
同じ断熱等級でも、求められるUA値は地域によって異なる。例えば、北海道(1,2地域)と東京(6地域)では、同じ等級5でも求められる断熱性能(UA値)は全く違う。暖房能力を考える際は、この地域差も考慮する必要がある。
【リンク集】5. 地域差:8つの地域区分
国土交通省
省エネ基準を管轄する国土交通省の公式ページです。このページ内にある「法令・制度、省エネ基準等」のセクションから、地域区分ごとの詳細な基準値(UA値など)が定められた告示(公式な文書)を確認することができます。
LIXIL(株式会社LIXIL)
LIXILが、国土交通省の告示を元に作成した、非常に見やすい地域区分の一覧表です。どの市町村がどの地域区分に該当するのかを、都道府県別に探すことができます。
【分かりやすい解説】
日沼工務店
地域区分とは何か、なぜ必要なのかといった基本から、区分ごとの特徴(寒冷地、温暖地など)まで、専門家(工務店)の視点で分かりやすく解説されているページです。地図も掲載されており、全体像を掴むのに役立ちます。